症状に合わせた治療

開咬の矯正治療

開咬とは

開咬とは

開咬(かいこう)とは、奥歯はきちんと咬んでも、上下の前歯が正常に咬み合わず、隙間が生じる状態を指します。オープンバイトとも呼ばれる不正咬合で、歯やお口の健康に深刻な悪影響が及びやすいです。前歯は正常に咬みあうものの、奥歯に隙間が生じるケースも広い意味で開咬と呼びます。

開咬からくる症状

開咬では、次に挙げるような症状が現れます。

隙間

前歯部に不自然な隙間が生じる

正常な歯並びでは、上の前歯が下の前歯を全体的に覆い隠します。開咬ではそうした位置関係が異常となることから、顔の印象を決定づける「スマイルライン」も大きく乱れてしまいます。笑顔になった際、前歯部に不自然な隙間があると、良くない印象を与えがちです。

噛めない

食べ物を前歯で噛めない

重症度によっても大きく変わりますが、開咬では前歯部で食べ物を噛み切ることが難しいです。食事の際には奥歯だけでそしゃくすることになるため、噛みにくさを感じる場面が多くなります。また、奥歯に過剰な負担がかかることから、大臼歯の寿命も短くなりがちです。同時に、顎関節への負担も大きくなり、顎関節症のリスクも増大します。

口呼吸

口呼吸になりやすい

開咬では、上下の歯列間に隙間があるだけでなく、口も開いた状態になりやすいことから、口呼吸が誘発されます。外部から取り込んだ空気が鼻腔ではなく、口腔を経由すると、大気中の細菌・ウイルスが直接、気道へと侵入するため、風邪やインフルエンザといった感染症のリスクが上昇します。口腔内が乾燥することによって細菌の活動が活発化すると、虫歯・歯周病のリスクも高まります。

発音・滑舌

発音・滑舌が悪くなる

上下の前歯部間に隙間があると、発音障害が現れます。滑舌が悪く、舌足らずなしゃべり方になることが多いです。

椎名先生イラスト

開咬の原因

開咬は主に幼少期の口腔習癖によって引き起されます。最も注意すべきは「舌突出癖(ぜつとっしゅつへき)」です。舌を前方へと突き出す癖で、一見すると愛嬌のある仕草に見えますが、それが習慣かすると上下の前歯が前方へと傾き、開咬の症状を引き起こします。

標準よりも長い期間、哺乳瓶を使用したり、おしゃぶり離れが遅れたりすることでも開咬が誘発されることがあります。その他、骨格的な異常が原因で開咬になることもあります。

オススメの矯正治療

開咬の治療方法は、小児期と成人期で異なります。

  • 小児期

    【小児期】

    幼児期から学童期にかけて開咬の症状が認められ、上述したような口腔習癖がある場合は、それらをやめさせることが何より重要となります。始めは親御さまが口で説明してやめるよう諭してください。それでも難しい場合は、歯医者さんに相談しましょう。矯正歯科や小児歯科では、歯並びを乱す原因となる口腔習癖をいろいろな装置を用いて改善できます。

  • 成人期

    【成人期】

    開咬の症状を大人になってから治療する場合は、マルチブラケット装置やマウスピース型矯正装置を用いた歯列矯正で対応します。骨格的な異常が原因で開咬となっているケースでは、外科矯正が必要となります。外科手術で顎の骨を切るなどして、正常な状態に矯正します。

    「顎変形症(がくへんけいしょう)」という病名が付いている場合は、保険診療で治療を受けられます。ちなみに、成人期でも指しゃぶりや舌突出癖などの悪習癖が残っている場合は、それらを解消することから始めます。

開咬は自力で治る?

治療

開咬は自力で治すことはできません。一般の人がどんなに頑張っても、上下の前歯部に生じた隙間は埋めることができないのです。ただし、幼児期に見られる開咬は、お子さまご自身の努力によって、ある程度改善できることがあります。指しゃぶりや舌突出癖を早い段階でやめることで、開咬の症状が進行するのを防げるだけでなく、発育の力によって正常に戻っていく可能性もあるからです。

とはいえ一度、開咬の症状が現れてしまったら放置せず、できるだけ早く歯医者さんに相談しましょう。積極的な矯正処置が必要になるかは別として、専門家に精密な診断を下してもらう必要があります。ですから、お子さまの開咬は決して自己判断せず、専門家の意見を聞くようにしてください。

子供イラスト

開咬が治ると

矯正によって叢生が治ると、次に挙げるようなメリットが得られます。

歯並びが美しくなる

矯正治療によって開咬の症状が治ると、次に挙げるようなメリットが得られます。

見た目が自然になる

開咬が治ると自然な見た目となり、口元のコンプレックスも解消されます。

前歯で食べ物を噛めるようになる

矯正によって上下の前歯の咬み合わせが正常になり、食べ物を“噛み切る”機能を取り戻せます。その結果、奥歯や顎関節への負担が減るだけでなく、食べ物を消化しやすい状態で飲み込むことから、胃や腸への負担も軽くなります。

口呼吸から鼻呼吸へ移行できる

上下の前歯部間の隙間がなくなることで、口呼吸から鼻呼吸へと移行しやすくなります。口をぽかんと開く癖が残ってしまう場合は、口腔周囲筋を鍛えて、口を閉じる練習をする必要があります。

発音・滑舌が良くなる

開咬の症状がなくなれば、自ずと発音・滑舌も良くなります。舌足らずなしゃべり方が恥ずかしかった人は、コンプレックスの解消にもつながります。